コナミがアーケードゲーム事業から撤退するのでは?とゲーセン経営者が考える理由 後編
前回書いたエントリー。
コナミがアーケードゲーム事業から撤退するのでは?とゲーセン経営者が考える理由 前編
長くなったので、続きです。
残りの2つの理由を、書きます。
それにしても、前回も書きましたが、桃鉄問題もヒートアップしていますね・・・
『桃鉄』騒動、コナミは終了否定したが……さくまあきら氏は「さよなら、桃鉄」
理由その3:従量課金を廃止し固定課金へ
コナミの人気シリーズに、「ウィニングイレブン」というタイトルがあります。
こちらのタイトルは、流石に人気シリーズということで、我がアーケードにも同じ名前で参戦しております。
サッカーゲーム好きなら、大体知っていると思います。
こちらのタイトルですが、コナミより、従量課金制を廃止し、固定課金へと変更する旨の連絡が来ました。
当然オンラインにしなくても、ゲーム自体が稼働できなくなるわけではありませんが、オンライン特有のサービスは使用できなくなります。
当たり前ですね。
現在コナミ製のアーケードゲーム機は、メダルゲームを除いてほとんどが、従量課金タイトルになっています。
麻雀格闘倶楽部やBEMANIシリーズもほぼ全て従量課金タイトルです。
以前書きましたが、ゲーセンの閉店の要因として、この従量課金が槍玉にあげられることは実に多いので、これでゲーセンは救われる!と皆さん思うでしょうか?
個人的には全くそう思いません。
私自身は、従量課金タイトルをメーカーが定額課金にするというのは、メーカーがそのタイトルで売上を向上させることを諦めた事に他ならないと考えています。
以前書きましたが、従量課金と言うのは、ゲーセン側に初期導入のリスクを減らす代わりにメーカーに収益が入ってくる仕組みです。
売上(稼働)に対する従量課金だと、メーカーはそのタイトルの稼働が上がれば上がるほど青天井で収益が入ってくる可能性がある、事になります。
こうした仕組みの従量課金をメーカーが廃止し、固定課金とするということは、メーカーがそのタイトルで売上を向上させることを諦めたとも考えられます。
このウイニングイレブンACに対しては、今後大幅なバージョンアップも、売上向上のイベントを行うこともせず、固定課金でネットワークサービスを維持するのみとなるのではないでしょうか。
この状態となれば、このタイトルは今後、緩慢な死を迎える以外に出口はないと思われます。
そして、もう一つ考えられる事は、このウイニングイレブンACが、こうした従量課金→固定課金のテストケースとなるという事です。
ウイニングイレブンACは、コナミの従量課金タイトルの中で比較的存在感が薄いタイトルです。
このウイニングイレブンACに関して、従量課金→固定課金の移行が、コナミとして上手く行ったと判断された時に、その他のタイトルに波及することは十分ありえる話だと思います。
例えば、今後BEMANIシリーズや麻雀格闘倶楽部に同様の手法が導入されていくと、同じように緩慢な死を迎える可能性は高いと感じています。
その4:ゲーセン界2大麻雀ゲームのハード的限界
さらに、緩慢な死に関してもう一つの問題があります。
その最たる例が、ゲーセン界の2大麻雀ゲームの「麻雀格闘倶楽部」と「MJ」です。
ある意味、緩慢な死の最前線に立っているような気が・・・
基本的に、両タイトル共に、「オンライン麻雀ゲーム」です。
ライバル関係にあるともいえ、お客さんによっては、好みの分かれる所でもあります。
一世を風靡しただけあって、両方合計したらかなりの台数が世の中にバラ撒かれています。
麻雀格闘倶楽部なんかは、最盛期は1万台近く稼働していたようです。
人気も未だ健在でして、両方共に稼働しているゲーセンは数あると思いますが、両方共に稼働していないゲーセンはあまりないのではないでしょうか?
ただ、この両タイトルですが、お客さんのしらない所で問題を抱えています。
それは、ハードウェア老朽化問題です。
麻雀格闘倶楽部は、2002年に稼働開始、MJも同じ位に稼働開始した気がする・・・
稼働開始当時の筐体や基板を、現在も使用しているわけではないのですが、少なくとも、基板に関しては、麻雀格闘倶楽部は2007年から、MJは2011年から変更されていません。
筐体はもっと古いものもあります。
今後、ゲーム内容の刷新や大幅なバージョンアップをしようとすると、ハードウェアが古すぎて対応できない事は十分に考えられると思います。
そのため、メーカーとして、売上のテコ入れなどで、ゲームの内容を大幅に刷新したい場合にハードウェア交換を行う必要があるのですが、それを行うとどうなるか?という話です。
例えば、基板を交換するとすると、1台あたり少なく見積もっても30万円位は必要だと推定されます。
以前のバージョンアップキットの価格はこれくらいだったので、そこからの推定です。
麻雀格闘倶楽部でも、MJでも、どっちでもいいのですが、1席当たり30万円のキットを発売して、基板を交換するとします。
こうした場合に、我々ゲーセン側は、こう考えます。
「30万もかけてバージョンアップして、売上が上がる見込みがないから席を減らす」
「同じ麻雀だし、どちらかに集約しようかな」
と考えます。
実際にこれに近い事例を、少なくともコナミは知っています。
それは、今から3年程前に、麻雀格闘倶楽部において「モニターコンバージョンキット」という製品を発売しました。
一番古い麻雀格闘倶楽部の筐体のモニターを、ワイドモニターに交換するというキットです。
この場合は、バージョンアップではないので、交換しなくても特別に問題はなく、ワイドモニターにするとゲームに付加価値が付けられます!というのがウリ文句だったわけです。
98,000円という低価格で発売したんですが、発売後もしばらく営業マンから案内があったので、絶好調で即完売!とはならなかったのだと思います。
この事例から、恐らくハードウェアの交換は無理だと判断していると思います。
また、同じ麻雀というフィールドで2つのゲームが競合しているので、どちらかがハードウェア交換に踏み切った場合にゲーセン側はそのタイトルを捨てて、片方に集約するという判断をすることは、十分考えられます。
そんなわけで、あえて悪くいうと、麻雀格闘倶楽部とMJで、打つ手のないチキンレースをしているとも言えます。
基板がやや新しいセガのほうが若干有利かな?という気もしますけど、市場の人気は麻雀格闘倶楽部の方が高いので難しいところですね。
実際に撤退に向けて動き出した?
以上4つの理由を書いてみましたが、もう一度まとめてみます。
1.製品終息が激しい
2.得意分野の市場の消滅
3.従量課金を廃止し固定課金へ
4.ゲーセン界2大麻雀ゲームのハード的限界
実は、「こういう部分が問題だな」という内容自体は、かなり以前から指摘されていた内容が多いんです。
プッシャー機の市場の話とか、麻雀のハードの問題とかですね。
それに対して、製品を直接的に終息(ネットワークサービス終了もしくはサポート終了)させたり、従量課金から固定課金へ移行したりと、実際に行動を開始し始めたという印象が強い。
そういった意味では、問題に対してコナミとして、答えを出した上で行動を始めているんだと個人的に判断しています。
その答えというのが、「少なくとも業界全体に対して前向きな答えではなさそうだなー」と感じています。
逆にスクエニや、バンダイナムコのようにアーケードありきの開発を行う会社もあれば、セガのようにアーケード単体として事業を成立させようとする会社もあるし、カプコンのように再参入してくる会社もあるので、面白いものです。
ちなみに今回のお話は全て勝手な推測ですので、あしからず。