ポート24 [PORT24] 愛知県のゲームセンター

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2014.10.06

アーケード向けのゲーム開発がメーカーにとってベターだと思う話

先日、ゲームセンターでの現在トップの売上を誇る、『LORD of VERMILION III』(以下:LOV)がバージョンアップやもろもろを発表しました。

アーケードで人気の「LoV」がなんとPCに登場! 新作MOBA「LORD of VERMILION ARENA」が電撃発表。早くもαテスターの募集が開始に

このニュース、素晴らしくゲーセンにインパクトを与えるニュースだと思うんですが、そんなに話題になっていません。
うーん、ゲーセンの経営者とかだと知らない人も多いんじゃないかな?

完全移植というよりも、クロスプラットフォーム

業務用のゲームが、家庭用やその他の分野に展開することは昔からありました。
例えば、スト2とか、VFとか鉄拳とか、ゲーセンに行かなきゃできない!というゲームが、家庭用ソフトで発売される。
これは、「完全移植」「移植」という流れです。

ただ今回は、ゲーセンでまだまだメイン機として活躍しているゲームの、別バージョンをPCで展開していくという新しい流れです。
LOVというタイトルは、アーケードでは、カード排出有りの「オンライントレーディングカードゲーム」です。
ですから、そもそも完全移植は不可能ですね。

以前、妖怪ウォッチの話で、クロスメディアについて書いてみました。

妖怪ウォッチのヒットの理由はクロスメディア?クロスメディア展開している他のタイトルと比較してみた

この場合は、色んなメディアに展開するのでクロスメディアと言いましたが、今回のLOVの場合は、アーケード・PCをまたぐクロスプラットフォームと言えばいいのかな?

クロスプラットフォームとなる理由

こういった展開は、今後も沢山起こると思います。

理由その1:各ゲームハードの進化

昔は、ゲーセンでしかできないゲームと言うのは、家庭用ゲームではスペックが不足していて、再現できないので、ゲーセンでしか遊べなかった。
しかし、現在はどのハードも画像処理、ネットワークスピード、マシンパワーなどは、遜色ないんですね。
例えば、セガの最新業務用基板「Nu」

セガ、次世代業務用ゲーム汎用基板“Nu”開発、採用第1弾タイトルは『初音ミク Project DIVA』新作

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こちらのスペックなんかは、PCに詳しい方はわかると思いますが、ゲーミングPCに比べて数値上は、上回ってない、というよりもむしろ劣っているクラスだと思います。
ちなみにこの基板を採用しているゲーム機はまだかなり少ないので、ほとんどはそれよりも古い基板で稼働しています。

このことからも、アーケード、PC、家庭用ゲーム機、もっと言えばスマホまでハード的には遜色ない。
ですから、同じコンテンツ(ゲーム及びキャラ)を、どこ向けに提供するのも恐らく技術的な問題は少ないのだと思います。

理由その2:開発費の高騰

もう一つは、ゲーム自体の開発費の高騰化があげられると思います。
我々ゲーセンに置いてあるようなゲーム機は、進化と共に基本的に値段も上昇していっています。
基板1枚が昔は20万円前後だったのが、現在は60万円前後までおよそ3倍ですね。

翻って考えて、家庭用ゲームソフトの価格を考えると、昔から現在まで1本5000円前後。
ファミコンカセットの時代から、現代までほとんどこちらは変化が無い。

またこちらのブログから

かつて夢溢れたコンシューマゲーム業界、もはや何かが大きく変わらない限り、これ以上の延命は無理だと思う。市場が小さくなったのもあるが、世代が変わるごとに開発費が高騰し、

ゲーム自体の開発費の高騰化は、今に始まったことではないようです。
また、上記のブログにもある通り、

GREE とか モバゲーの流れで低コスト1本2000万とかで作れていたガラケーのソーシャルゲームが、ネイティブ時代になって1本1億超えは当たり前で、しかも回収が難しくなっている。小ヒットじゃ許されなくなった。中ヒットでトントン、大ヒットで次に繋がる感じ。

スマホゲームでも開発費は高騰化しているわけです。

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以上のことから、アーケード、PC、家庭用、スマホどのプラットフォームでゲームを開発しても、ハードの進化と共に開発費はあまり変わらない状況になっている。
のではないか?と思います。

最新作は「アーケード」優先で発売する時が来る?

では、ここから視点を変えて考えてみます。
どのプラットフォームでゲームを開発しても、ハードのスペックと開発費に大差がないとして、ビジネスとして、どうしようか?という話に行きつきます。

もっとも回収可能性が高いところにゲームを発売しようとなるわけですが、そうなるとアーケードはビジネスとして回収可能性が最も高いです。

LOVの例をあげます。
このLOVというゲーム機ですが、前作の1〜2が発売し、昨年新筐体となって3が発売となりました。
単純に今回のLOVⅢからの展開を考えてみると、4席と1つのメインモニターで、784万円(税抜)です。
そして、このセットが全国で500セット売れたと考えると、

784万円 × 500 = 約40億円

ゲーム機のハードの費用が原価で掛かるとして、単純に50%原価だと考えても、20億円程度の回収が、発売しただけで、完了することになります
LOVの場合はこれに加えて、カード購入がありますので、単純に考えてビジネスとしては、最も効率が良いと思われます。
順番を変えて、今回のPC版のLOVを先に発売して、20億回収できるか?とか、スマホや家庭用で開発して、20億回収できるか?とか考えると、アーケード優先というのは、メーカーにとって最も効率よく費用を回収できると、思います。
当然、これは売れた時の話ですので、売れなかった場合はハードの分だけ損失がでるんですが、現在のアーケードゲームは、ほぼ受注生産ですので、仮に売れなければ、ハードは作らなければ良いので、損失はソフトの分だけで限定的でしょう。

このことから、以前スクエニがアーケードに参入したことや、今回のLOVというキラータイトルのPCへの参入と言うのは、ビジネスとして、全く正しいなぁと感じます。

ただ、これがPCで発売されると、セガの業務用初MOBAタイトル「Wonderland Wars」はキビシイよな・・・