ゲームセンターの曲がり角「ゲームの進化と消費税対策」中編
前回のエントリーはこちら。
その続きです。
消費税導入に対して
そんな中、1989年日本でも「消費税」が導入されます。
通常の業種でも、レジの変更や、機器の入替えなど様々な手間がかかったわけですが、我がゲーセン業界は基本的に「ワンコインビジネス」であることから、ほぼ全てのゲーセンが「消費税を持ち出し」となりました。
個々のゲーム機に、機器を追加するコストに較べて、持ち出した方がまだ良い、という判断が主な要因だったと思います。
それ以前に「3%くらいなら何とかなるか・・・」という判断もあったと思います。
ただ、その一方で、その頃から、消費税については、3%は暫定であり、将来の増税は確定的だといわれていました。
ですので、ゲーセンの消費税対策としては、
「より付加価値の高いゲーム機でプレイ単価が高額なゲーム機もしくは、繰り返し遊んでもらえるゲーム機」
を目指すことになります。
従来は、1PLAY=100円だったのが、200円・300円でもOKなゲーム機か、より長く繰り返し遊んでもらえるゲーム機がよいとされます。
特に、消費税対策としては、前者の「高単価ゲーム」の方が直接的です。
旧来は100円しかしなかったものが、200円や300円、場合によっては500円という単位でのゲームプレイとなれば、当然です。
ですので、割りと早い段階で、「大きなゲームセンター、大きなゲーム機」というのが業界の流れになります。
代表的なのが、
ダービーオーナーズクラブ
DERBY OWNERS CLUB 2009 ride for the live Official Website
や、現役稼働しているものだと、
この辺りは、高単価ゲーム機の代表例ですね。
現状では考えられないことですが、15年程前には「ゲーセンなら1000坪くらいないと・・・」とか、そんな話が普通にされていました。
今、1000坪全てゲームで埋めるとなると・・・結構厳しい気がするけどな・・・
ちなみに、この時点で今までビデオゲーム専業で営業していたゲーセンは結構厳しくなってしまうんですね。
ビデオゲーム専業店の場合は、店舗面積が小さめのお店が多いので、そうしたゲーム機を導入したくても出来ないという、物理的な理由によります。
逆に考えれば、小型のビデオゲーム専業店の場合は、なかなか効果的な消費税対策を打ち出せなかったともいえます。
(あくまでも業界的にの話なので、個別に創意工夫で生き残っているお店もあるのは当然です)
大きなゲーム機が生み出したビジネスの変化
これに対して、メーカーとオペレーターの関係性も少し変化します。
というのも、小型のゲーム機の場合は、
メーカーが在庫を持って販売する
のが普通でした。
特に、ゲーム基板やROMなどのソフトのみの場合は、営業マン直接お客さんのところに持ち込んで、試しに使用してもらって売るなんて事もザラにある時代でした。
今じゃ考えられないですけどね・・・
家庭用ゲームソフトと同じく、基板自体の原価は大きなコストではないので、複製コストは限りなく安い。
したがって、沢山つくって販売すべき!
というのが、メーカーの基本スタンスでした。
このスタンスが、「大きなゲーム機」を志向すると徐々に変わって来ます。
ゲーム機が大きくなると何が起こるか?
まずは、開発費がより大きくなります。
ソフト部分の開発もさることながら、ハード面の開発にも費用が掛かる。
したがって、ゲーム機自体の価格も高くなっていくわけです。
ゲーム機自体が高額になるとどうなるか?
購入するゲーセン側としては、おいそれと手が出しにくくなるとかもあるんですが、基本的に、
「メーカーが在庫リスクを持たなくなる」
というのが最も大きな変化です。
ゲーム機自体がアタルかどうかなんて、誰にも稼働するまでわからないので、ゲーセンだって必ず購入するわけではありません。
基本的に高額になればなるほど、購入には慎重になりますし、少しでも打率を上げたい。
こうした場合に、当然メーカーとしても、作ったはイイけど売れない!という状況は、ゲーム機が高額であればあるほど避けたいわけです。
1000万級のゲーム機が100台在庫として残るとか、シャレにならんですよね・・・
となると、考えることは、
「生産前発注」
を考えます。
これが、以前も書きましたが、ゲーム機購入の可否判断を難しくしている要因でもあります。
メーカーは、注文が来た分だけを生産すれば良いので、ノーリスクです。
ただ、苦しんだゲーセンが、ゲーム機を「購入しない」という選択をすると、注文分だけでは生産ロットに届かない場合もあり、メーカーは苦戦しているようですが・・・
苦戦した結果、ネットワーク課金のゲームに変更して、ゲーム機の導入コストを下げて販売するという流れが最近は多いです。
ある意味、
苦肉の策で、ネットワーク課金を導入する
という面も見られます。
消費税対策に「失敗」
このようなメーカーとゲーセンの間でのビジネスモデルの変化がありつつも、基本的には、「高付加価値ゲーム機」を求める状況は変化しませんでした。
ただ、正直に申し上げて、高付加価値ゲーム機での高単価ゲーム機による売上増、ひいては単価引き上げによる消費税対策というのは、
「基本的に失敗」
します。
失敗したからこそ、市場規模が減少し、店舗が減っていく現在があるのだと思っております。
そういう意味で、よくお客さん側から、
「消費税のせいでゲーセンが閉店」
と言われますが、実際には、
「ゲーセンは消費税対策しようとしたけど、失敗したから閉店」
という流れのほうが正しいのでは無いか?と思います。
では、なぜ失敗したのか?を幾つか理由を考えてみます。
さらに次回へ。