ラウンドワンの決算を見ると、業界の流れが見えてくる?業績修正について考えてみた
春といえば、新年度が始まるシーズンです。
学校生活や、社会人生活が新たにスタートする時期ですね。
我々のような中小企業は別として、一般的に大きな会社だと同じように4月から新しい年度がスタートします。
大会社さん限れば、ほとんどが3月決算で、4月から新年度となるパターンが多いです。
そして、上場会社になると、この時期から6月の株主総会までが決算発表が相次ぎます。
我々、アーケードゲームに関係ある上場会社だと
・セガサミーホールディングス(株)
・コナミ(株)
・(株)バンダイナムコホールディングス
・(株)スクウェア・エニックス・ホールディングス
・(株)ラウンドワン
・SDエンターテイメント(株)
・(株)ゲオホールディングス
・(株)イオンファンタジー
が主だったところでしょう。他にもあったかな?
一行間をあけたのは、メーカーとオペレーターの差です。
業界人としては、一応全て決算の資料なんかは目を通します。
人の財布の事情が気になるというゲスな精神と、今後の製品の説明もサラッと触れていたり、1年の振り返りで参考になる部分があったりするからですね。
ラウンドワンの直近の発表
公式サイトより
この中で、直近だとラウンドワン(敬称略)の業績予想の修正が提出されました。
税制改正等に伴う業績予想の修正及び特別損失の計上に関するお知らせ
基本的に、決算の予想のかなりの悪化が見込まれるということで、こちらの発表がされたようです。
業績悪化の理由として、繰延税金資産の取り崩し、売上の未達、景品費の上昇、店舗の減損といった要因があると書かれています。
私は、ラウンドワンの内部の人間でもない全くの外野ですが、いくつか気になる部分があったので、その辺りについて今回は書いてみたいと思います。
ボウリングの事や全体のことはわからないので、もちろんアミューズメントの事だけです。
経営者っぽいでしょ?
売上の未達及び景品費の上昇について
12月以降、料金プランのプラス効果が一巡したことによる反動で売上高が減少した
まず、こちら。
2013年の12月より、ラウンドワンで大規模な値下げキャンペーンがスタートしたのは記憶に新しいところです。
たしか、メダル1,000円500枚、プリクラ1回300円などの大規模な値下げキャンペーンをしたような覚えが・・・
当然、業界内で物議をかもすというか、言って見れば「黒船がやってきた!」というイメージで捉えられました。
この時も私個人としては、「値下げの効果は大体1年で一巡して、売上自体も元にもどるのでは?」と今までの経験で思っていました。
その1年の売上を取りにいくかどうか?が判断の分かれるところなんですが。
というわけで、月次ベースの売上も見てみると、
平成 27 年 3 月期 (4 月~3 月)の既存店売上高 前年比推移 より
平成 26 年 3 月期 (4 月~3 月)の既存店売上高 前年比推移 より
資料にも書かれている通り、一巡したと言えると思いますが、この4Qだけで考えると、前年が+8%で今年が−9.8%なので、残念ながら、値下げする前より売上を落としてしまったという事が言えると思います。
この辺りは、我々同業としても、非常に厳しい結果だな・・・と捉えています。
そして、損益的に厳しくなる要因だと考えられるのが、メダルの大規模な値下げです。
去年の値下げキャンペーンの中でも、かなり中核を占めていたはず。
現状、ゲーセンの構造として、ネットワーク課金のゲームが増えているのは、何度かこのブログでも言及しています。
ゲームセンター閉店の一因かもしれないもの?ネットワーク課金の功罪
ですので、最近のネットワーク系のビデオゲームは、売上が増えても経費も増えるので、利益率は良くない。
逆に、メダルゲームに関しては、従来通り「売上=利益」という形式は今までと変わっていないです。
そのメダルゲームの売上が伸びた昨年は、当然利益も伸びますが、今後値下げ効果が一巡した今年は仮にメダルの売上が減少すれば、その分利益が下がる事を意味します。
ネットワーク課金のゲームが好調でも、メダルゲームがその分以上に売上が落ち込むと、利益率は悪化するという現状で、利益の予想も修正されたのでは?と考えられます。
店舗の減損処理について
もう一つのハイライトは店舗の減損処理です。
ラウンドワンスタジアム浜松店はこんな感じ。
減損会計(げんそんかいけい、impairment accounting)とは、資産の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合、当該資産の帳簿価額にその価値の下落を反映させる手続きをいう。減損処理ともいう。
wikipediaより
簡単にいうと、投資した分が回収できていないなら、資産の価値も落としなさいよ、という話でしょう。
基本的にラウンドワン位の企業規模になれば、ゲーム機や遊戯設備を購入するのに自己資金を使用する事はなく、リースを使用する場合がほとんどだと思います。
リースであれば、所有権はリース会社にあるので、このような減損の対象にはならないので、今回の場合、純粋に店舗及び設備の価値が約40億減少しているという事になると思われます。
ラウンドワンの建物であれば、他業種に直ぐに転用できるものでも無いので、理屈的にはわかりますが、それだけ既存店舗の収益性が低下していることを表しているとも思われますので、こちらも同じく衝撃的な事実です。
大手の決算から学ぶべき部分は多い
以上のように、ラウンドワンといえど、アミューズメントを取り巻く環境は厳しいというのがわかって頂けると思います。
ただ、ここから何を学ぶか?の方が重要なので、そこに目を向けると逆にメダルゲームの利益率の高さとか、店舗の価値を上げることなど、様々な点で参考になる部分も多いですね。
それ以外にも、メーカーの決算なんかも見ていると面白いので、発表されたらまたツッコんでみたいと思います。