某メーカーが越えてはいけない一線を越えたと思う話
先日書いた、こちらのエントリーですが、
メーカーによるネットワーク切断についてゲーセン経営者が語っておこう
あまりにもコアな話なので面白くないだろうなー、と思ったんですが、多くの方から反応を頂き、ビックリしております。
トラブルの話だと、皆さん反応速いよね・・・
詳しい中身は、上記リンクから読んでいただければわかると思いますが、書類送検されるってのは、越えてはいけない一線を越えてしまったからだと思います。
なかなかそうした一線を越えると後戻りできないよねーというのが今回のお話です。
一般ユーザーの方にはメリット
前回はオペレーター(ゲーセン)の方の話ですが、今回はメーカーの話です。
越えてはいけない一線といっても、別に「犯罪」とかではありません。
その内容というのは、こちらのニュースから。
ナムコ限定「釣りスピリッツポケモンVER.」が期間限定で登場! | イベント・キャンペーン | ナムコ 「夢・遊び・感動」を。
バンダイナムコエンタテイメント(以下:BNE)の人気機種「釣りスピリッツ」において、ナムコの店舗限定でポケモンが現れるというイベントです。
一般のユーザーから見れば、「へぇー面白そうじゃん」で終わる話だと思います。
しかし、我々ゲーセン側(オペレーター)の視点で考えると、「これは越えてはいけない一線を越えたな・・・」と思うわけです。
どういうことか?
これを、あくまでも私見ではありますが、述べていきたいと思います。
なんとなくの不文律
当業界において、主なビジネスのプレイヤーは3者存在しています。
ユーザー、ゲーセン、メーカーの3者です。
この中で、大手のメーカーは、ほとんどのゲーセン機能とメーカー機能を、別会社であったり、別の事業部として組織を作り、ある程度お互いに牽制しあう状態を作っております。
上記の例でいえば、釣りスピリッツを作ったのは「BNE」で、ゲーセンの運営会社は「ナムコ」となります。
したがって、建前上、あくまでも「ゲーセン部門」と「メーカー部門」はメーカー内で切り離されているので、
「自社だけに優位な開発を行う事はしない」
というのが、メーカーとしての建前であり、そうでなければ、一般のオペレーターは当然「自社グループ内で有利な事をする」という心象をメーカーに持ちます。
ですので、メーカーが自社グループにのみ便宜を図るような開発は行わない、というのが、ある意味法的拘束力は全く持たないものの、「なんとなくの不文律」として存在していました。
まぁ、「なんとなくの不文律」なんで、「思ってたのはお前だけやろ!」みたいな事を言われると、言い返す事もできないわけですが・・・
今回の「ナムコの店舗だけポケモンが出現する釣りスピリッツのアップデート」というのは、この不文律を、あっさりと乗り越えて採用されているわけです。
これは、我々一般オペレーターから考えると、残念な話だと思うんですけどねぇ・・・今に始まったことじゃないじゃん?って意見もあると思いますけど、コレをやってしまうと、建前上の、「メーカー機能とオペレーター機能の分離」というのも、建前ですらなくなってしまうので、「越えてはいけない一線を越えた」と思うわけです。
手続きが不透明なのがより問題
そして、何より問題なのは、手続きが不透明な事です。
その不透明さというのは、2つあって、
・バージョンアップであって、事前に告知された内容ではない
・どういうプロセスを踏めば採用されるのかがわからない
という2つの面で、不透明なんです。
一つずつ考えてみます。
やるなら最初から告知すべき
昨今のメーカー事情を考えると、特定の大手オペレーターに特別なゲーム機を発売するとか、そのオペレーター仕様のゲーム機を発売するとかは、別に特段おかしなことだとは考えていません。
具体例をあげれば、コナミでは、「ツナガロッタ」というゲーム機を、最初から、某オペレーターに向けて制作する前提で発売し、その後、要望があれば、一般のオペレータにも販売するという施策を採用したことがあります。
それ自体は、我々弱小オペレーターから見れば「大手の力は凄いなー」で終わる話です。
しかし、今回の釣りスピリッツについては、
製品の発売時に告知することもなく、バージョンアップにおいて、オペレータ間で差がつく施策を採用した
事は、逆に言えば、「知っていれば購入しない」という選択肢も、一般オペレーターにはあったはずですが、それを行うこともできません。
こうした、事前の告知なしで、特定のオペレーターを優遇する施策を行うことは、一般オペレーターから見れば「なんだかなー」と思う意見も出てきそうな気がします。
まぁ、こんなのは大した問題じゃないけど、「事前に言えよ・・・」って思いますけどね。
俺にもやらせろや!って言われたらどうするんだろ?
もっと問題になるのは、こっちだと思います。
私のような弱小オペレーターには全く関係のない話ですが、こうした施策がBNEとして「アリ」なんだと言うことになると、大手オペレータはなんでも出来ることになります。
・人気アニメの曲を使用する許諾をとったから、ウチの店舗の太鼓の達人にだけ配信してくれ
・○○ガンダム使用許諾とったから、ウチの店舗のEXVSにだけモビルスーツ配信してくれ
・事前に○○億円払うから、鉄拳7FRの新キャラはウチだけに配信してくれ
とか、出来るかどうかはわからないですが、こうした要望って、メチャクチャ出てくるんじゃないですかね?
で、当然、BNEがメーカーとして「できません」といったら、大手オペレーターとしては、「ナムコの店舗だけ釣りスピリッツにポケモンだして、ウチはできないのおかしくね?」って言われる気がするんですけど・・・
こうした、「その施策が可能になるプロセス」というのがハッキリしていれば、いいんですけど、これを聞いてハッキリ応えることって出来るのかなー?というのが疑問です。
営業マンも大変だなー
オペレーターの方が強い時代がくる?
こう考えると、私のような弱小は、「メーカーがなきゃゲームが入荷しないから生き残れない」と考えてしまいがちですが、大手オペレーターは「ウチが買わなきゃ作れないじゃん?」と言える風潮がより強くなったとも言えます。
本来、商取引は買う側の方が優位なんですけど、この業界にもそんな時代がくるのかな?などと考えてしまします。
なんにせよ、中小には関係ない話ですけどね・・・